「オフィスに会議スペースを作りたい」「個々人が集中しやすい空間を作りたい」など、オフィスの悩みを気軽に解決してくれるパーテーションですが、高さや設置方法によっては消防法違反に問われる可能性もあります。

この記事では、天井まで高さのあるパーテーション設置する際の届出と、消防法で定められている設備基準・安全基準を満たすためのポイントを分かりやすく解説します。

パーテーションを設置のをご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

 

1.パーテーションを天井の高さまで立てる際は消防署への届け出が必要!

 新たな壁を作るよりも比較的簡単にオフィスレイアウトを変更できるパーテーションですが、天井まで届く背の高いものは、消防署への届け出が必要です。

天井まで間仕切る施工型パーテーションは、災害時に消火・排煙設備が正常に作動せず、安全な避難経路の確保ができなくなるリスクがあります。

もし届け出を怠ったり、火災時の安全性が確保されていないと消防署に判断されたりすると、オフィス使用停止の行政処分や罰金刑などが科されるかもしれません。 ただし全てのパーテーションが消防法の対象というわけではなく、腰や背の高さくらいの置き型・移動式のパーテーションなど、防火設備や避難の妨げにならないものは対象外です。 

 

2.届け出に必要な書類

天井まで届く高いパーテーションを設置する場合には、2つの書類を消防署へ提出する必要があります。

まず、防火対象物工事等計画届出書を作成し、提出することになります。
防火対象物工事等計画届出書は、届出人の住所や氏名、敷地の概要として所在地、用途地域や敷地面積などを記載します。
また、防火対象物の工事開始日や用途、構造を始めとし設計や工事を実施する者の住所や氏名なども必要となります。さらに、防火対象物の平面図や立体図、断面図などの詳しい図面も添付しなければなりません。
 
必要な書類が揃ったら、建物を管轄する消防署に提出します。 空間に間仕切りを立て、壁として区切って部屋数を増やすだけなのに、わざわざ消防署に届け出するのは面倒だという人もいます。
しかし、届け出が必要となるのにはれっきとした理由があります。
それは、間仕切りを立てて部屋の遮断性が生まれることにより、火災が起きた際危険性が高まるので、人的、物的被害を最小限に食い止めるためです。
 
例えば間仕切りを立てて部屋の中で火災が起きた場合、自動火災報知機などが作動しないと他の部屋にいる人へ火事を知らせることができません。スプリンクラーや排煙口が不十分だと消火や排煙が遅れて、火災による被害が拡大してしまう恐れも出てきます。
間仕切り一つをとってみても、建物全体の安全性の観点から見ると万一の際に被害が拡大する可能性があります。
 
そのため、きちんと消防法に規定し、人々の生命や財産を守れるようにしておかなければならないのです。
そして消防署には、防火対象物がどのように使用されているのかを知り、防火に関してのスペシャリストとして、その工事の内容を確認する義務があります。
 
工事によって間仕切りを立てることで消防設備に不十分な個所がないか、建物の安全が確保されているかを審査しています。
違法な工事を防ぎ、もちろん不備があれば工事内容の変更や消防設備の増設を指導する立場にあることが特徴です。

 

防火対象物工事等計画届出書

天井まで届く高さのパーテーションで空間を仕切り、新たに個室を作る場合には「防火対象物工事計画届出書」の届け出が必要です。工事を始める7日前までには、管轄の消防署に届け出なければなりません。 必要となる書類は下記の通りです。

  • 防火対象物工事等計画届出書
  • 防火対象物の概要表
  • 案内図
  • 平面図
  • 詳細図
  • 立面図
  • 断面図
  • 展開図
  • 室内仕上表および建具表
  • 火気使用設備等または火気使用器具等を設置する場合は、その位置・構造等の状況を示した図

適切な工事かどうかを消防署が事前に審査・指導し、建物の安全性を確保するために、計画段階での届け出が求められます。

参考:東京消防庁「防火対象物の工事等計画の届出制度」

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouka/(参照2024-04-19)

 

防火対象物使用開始届出書

天井まで届く高さのパーテーションで間仕切りを行うには、防火対象物使用開始届出書の提出も必要です。 「元々のオフィスを使用するから使用開始届出書は関係ない」と思う方もいるかもしれませんが、先ほどの防火対象物工事等計画届出を行った場合は、併せて防火対象物使用開始の届出も必要です。

消防署が消防用設備の設置状況などを審査・指導し、建物の安全性を確保するために提出が求められます。使用を始める7日前までに、管轄の消防署へ届け出ましょう。

※参考:東京消防庁.「防火対象物の工事等計画の届出制度」

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouka/02.html  (参照 2024-04-19)

 

3.パーテーションの設置前に確認すべきポイント

 パーテーションを設置する前に、いくつか確認しておくべきポイントがあります。

ここでは4つのポイントを紹介します。

 

天井の種類

事前に確認するべきポイントの一つが天井の種類です。オフィスで使用される天井は、大きく3つのタイプに分けられます。タイプによってはパーテーション工事が難しい場合もあるため、自社のオフィスがどのような天井なのか、事前に確認しておきましょう。

在来工法天井(鉄骨鉄筋天井下地工法)

在来工法天井(鉄骨鉄筋天井下地工法)は、オフィスの天井としてポピュラーな定番タイプで、ボードを組み合わせて作られています。 照明器具や空調など天井の設備機器を動かすのが難しく、設備を動かそうと思うと天井ボードを解体する必要があるため、大がかり工事となる場合があります。

グリッド型システム天井

グリッド型システム天井は、600mm角もしくは640mm角の天井パネルを格子状に組んだ天井です。 天井パネル・照明器具を部分的に交換できるため、天井設備機器のレイアウトを変更しやすく、パーテーション工事に適しています。 またパーテーションの設置時だけでなく、撤去時に原状回復する際に、一部分のパネル交換で済むのも魅力です。

ライン型システム天井

ライン型システム天井は、天井仕上げ材と天井設備機器が一体化している天井です。照明器具・スピーカー・火災感知器・スプリンクラー・空調・排煙口など、天井周りの設備機器が組み込まれています。 これらの天井設備は簡単に移動でき、柔軟にレイアウトを変更できるため、ライン型システム天井はパーテーション工事に適した天井です。

パーテーションの素材

建築基準法には「内装制限」という規定があり、一定規模以上の建物などには、壁・天井をはじめとした内装材の防炎性能基準が設けられています。 パーテーションも内装材に含まれており、ビル11階以上の高層階や地下階などでは、不燃認定されている素材のパーテーションを使用しなくてはなりません。

例えばスチールパーテーションや一部のアルミパーテーションなどは不燃認定を受けており、使用可能となっています。

また建築基準法では問題なくても、オフィスが入居するビルが独自に規定を定めていることも考えられるため、工事を行う前にビルのオーナー・管理会社などに確認しておきましょう。

※参考:e-gov.「建築基準法」

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201 (参照2024-04-19)

 

パーテーションの設置可否・搬入経路

パーテーションの設置可否や搬入経路が確保されているか、あらかじめ確認しておきましょう。天井までの高さのパーテーションを設置する場合、天井や床に穴を開ける必要があるため、工事をしてパーテーションを設置して良いかビルのオーナーや管理会社に確認が必要です。

また天井まで届くような背の高いパーテーションの場合、搬入時の導線の確保も大切です。縦・横ともにある程度大きなサイズになってしまうため、エレベーターや階段などを通れないかもしれません。 問題なく搬入・工事できるサイズなのかをあらかじめ確認しておき、実際の搬入ルートをビルのオーナーや管理会社などと相談した上で、施工会社と打ち合わせましょう。

 

天井設備の配置場所

天井まで届くパーテーションの場合、天井設備との位置関係も確認しておくべきです。 例えばパーテーションで区切ることで、以下のような問題が発生するかもしれません。

  • エアコンの風が遮られて冷房・暖房が効かない
  • 照明の光が遮られて暗い
  • 煙感知器が正常に作動しない
  • スプリンクラーの水を遮る

このような問題が発生すると、オフィス環境が悪化して働きにくくなるだけでなく、災害時に致命的な支障が生じる可能性もあります。特に煙感知器・熱感知器などは消防法で設置位置が定められているため、要件に反する場合は増設・移設などが必要です。

 

4.消防法で定められている消防設備ごとのパーテーション設置基準

 消防設備には、消防法により設置場所の規定が細かくされています。

パーテーションの設置によってオフィスのレイアウトが変わり、消防設備を設置するべき場所も変わります。パーテーションの設置により規定違反になる場合は、基準を満たすよう増設・移設などが必要です。

消防設備ごとに基準が異なるので、それぞれ解説します。

 

煙感知器

煙感知器は、火災初期に発生する煙を感知する機器です。火災時の煙をいち早く察知できるよう、主に以下のような基準を満たす必要があります。

  • 壁(パーテーション)から60cm以上離す
  • 空調や換気吹出口から1m50cm以上離す

煙感知器の付近にはパーテーションを設置するのを避けましょう。

※参考:大阪市消防局.「2章 警報設備 第1節 自動火災報知設備 」

https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/cmsfiles/contents/0000350/350878/2.1jikahou.pdf (参照2024-04-19)

 

熱感知器

熱感知器は、温度上昇を感知して火災発生を知らせる機器です。火災で発生した煙が熱よりも先に感知されるため、煙感知器に比べると早期検出能力はやや劣ります。 熱感知器の設置時には、主に以下のような基準を満たす必要があります。

  • 空調や換気吹出口から1m50cm以上離す

煙感感知器とは違い、壁からの距離に関する規定はありません。

※参考:大阪市消防局.「2章 警報設備 第1節 自動火災報知設備 」

https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/cmsfiles/contents/0000350/350878/2.1jikahou.pdf (参照2024-04-19)

 

排煙設備

排煙設備は火災発生時に煙を屋外に排出して避難時間を確保するための設備です。パーテーションの設置により排煙口のないスペースができないように、以下のような規定を守る必要があります。

  • 区画内のあらゆる場所から30m以下となるよう設ける
  • 天井から0.8m以内に、床面積の1/50以上の開口を設ける(自然排煙方式の場合)

※参考:e-gov.「建築基準法」第126条の2

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201 (参照2024-04-19)

 

非常用スピーカー

非常用スピーカーは、災害発生などの非常時に的確な情報伝達・避難誘導を行うための設備です。パーテーションにより音が遮られないように、下記のどちらかを満たす必要があります。

  • 放送範囲内のどの場所からも10m以下になるよう設置する
  • 床面から1mの任意の場所で75dBの音圧を確保でき、明瞭に聞き取れる性能を有する

※参考:e-gov「消防法施行規則」第215条の2

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000008006 (参照2024-04-19)

 

非常用照明

非常用照明は、停電の際にスムーズに避難するために、室内・廊下・階段などを照らす照明です。真っ暗な状況でも避難経路を認識できるように、以下のような基準に従って非常用照明を設置しなくてはなりません。

  • 無窓居室には、非常用照明を設置する
  • 非常用照明は直接照明とし、床面において1lx以上の照度を保つ

ただし床面積が30㎡以下の場合は、非常用照明を増設する必要はありません。

※参考:国土交通省.「非常用の照明装置を設置すべき居室の基準を見直します」

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000718.html (参照2024-04-19)

 

誘導灯

誘導灯は、災害時でも迅速に避難口を認識させるためのライトです。不特定多数の方が利用する建物や高層階などへの設置・維持が義務付けられています。以下のような基準が設けられています。

  • 個室の各部分から非常口まで30m以上ある場合は、個室の出入口に設置する
  • 間仕切った個室から主要な非常口を目視できない場合、個室の出入口に設置する

パーテーションによって誘導灯が隠れてしまわないように、高さ・大きさに注意しましょう。

※参考:e-gov「消防法施行規則」消防法施行規則第28条の3

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000008006 (参照2024-04-19)

 

5.消防設備を増設・移設せずにパーテーションを設置するには?

 消防設備を増設・移設せずにパーテーションを設置するためには、「欄間(ランマ)」を設けることが必要です。

天井まで届くパーテーションで完全に個室を作る場合は、消防設備を機能させるために、増設・移設を検討しましょう。

パーテーション上部に欄間を設けて空間を作っておくと、防災設備の妨げにならず、増設・移設に必要な費用の発生を防げます。

消防設備ごとに必要な欄間の大きさは定められており、設置予定のパーテーションと既存の消防設備の距離によっても必要な欄間の大きさは異なります。欄間を設けて設備の増設・移設を避ける方法を取りたい場合は、設計を依頼する業者に相談し、適切な大きさの欄間を設けましょう。

 

6.間仕切り設置で届け出を怠ると消防法に違反する

 間仕切りを立てる程度の比較的簡単な工事を行う場合でも、消防署への届け出を怠ると消防法違反になります。
故意ではなくても知らないうちに消防法違反を犯している場合があり、そうなると消防法により罰則を受けることもあるので、注意が必要です。
 
消防法違反者に対し、消防署はまず届け出をするように指導を行います。届け出内容を審査して、防火や安全の観点から消防設備の設置や工事内容の変更などが必要であれば指導します。
それに従わなければ、従うよう警告が出されます。それでも改善されなければ、行政処分として消防用設備設置命令が下されます。
 
もし従わない場合は、設備設置命令違反として1年以下の懲役または、100万円以下の罰金が科されます。安全性が確保されない対象物に関しては、使用を停止するように行政処分として使用停止命令が出されることもあります。
従わずに使用し続けると、使用停止命令違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されるようになります。
 
そして、命令が出されると建物の出入り口に、この建物は防火の観点からとても危険であるという旨の標識が立てられ、建物に出入りする人に危険を周知するための措置がとられます。
病院やホテルなど様々な人が毎日のように出入りする建物に関して、万一火災が起きた場合は避難が困難になってしまい、自力で避難できない方も出てきます。
 
そのため、危険性を周知することは大切な呼びかけとなります。危険度をさらに周知するため、違反建物として市のホームページに掲載されることもあります。
このような措置を受けないためにも、隙間のない間仕切りを設置する際には必ず届け出をするようにしましょう。

 

7.まとめ

 パーテーションの設置は、壁を作るよりも気軽にオフィスレイアウトを変更できる手段です。

ただし天井まで届く高さのパーテーションを設置する場合は、消防署へ届け出が必要だったり防災設備の増設・移設が必要だったりと、法に則った仕様ルールに従う必要があります。

とはいえ必ずしも防災設備を増設・移設しなければならないとは限らず、適切な大きさの欄間を設ければ、パーテーションの設置だけで済む場合もあります。

パーテーションラボでは、消防法を遵守した工事はもちろん、消防署への届け出やビルの管理会社とのやり取りといった手続きの代行も可能です。

パーテーションの設置を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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