今や、世界的に受動喫煙を防止する動きが広がっていますが、日本でも全国各地で自治体による受動喫煙防止対策が行われています。
こういった動きの中で、とうとう国会でも健康増進法の一部が改正され、受動喫煙防止への対策が法律として定められました。
しかし現実問題として、すべての施設にいっぺんに導入することは難しいため、経過措置が設けられています。
 
ここでは、国が定めた改正健康増進法と、それよりも厳しいと言われる東京都の条例の違いを見ていきます。
 

飲食店は客席面積によって例外対象が決まる

 
都条例・法律共に、原則屋内での喫煙は禁止となります。
ただし、今回の改正健康増進法では客席面積が100平方メートル以下の飲食店は別に法律を定めるまでの経過措置として、対象外となっています。
 
その他、例外の対象となる飲食店が喫煙を許可する場合は、喫煙可能ということが分かるようポスターや看板などを提示すること、また客・従業員ともに20歳未満の立ち入りを禁止することで、店内での喫煙も認める経過措置も取っています。
 
一部の飲食店にこのような経過措置を認めることにより、現時点で改正健康増進法の対象となるのは、飲食店全体の約45%と言われています。
 

教育施設でも条件付きで屋外に喫煙スペースを設置できるケースも

 
改正健康増進法においては、保育園や幼稚園、小中学校、高等学校では敷地内で禁煙となっています。
ただし、受動喫煙防止のために、国が設けた基準をクリアしていれば、当該の施設であっても、屋外に喫煙スペースを設置することができます。
 

中小企業は資本金もしくは出資の総額で例外対象が決まる

 
改正健康増進法の対象は、飲食店など不特定多数の人が出入りする施設だけではなく、会社にも適用されるため原則的にオフィス内での喫煙も不可となります。
ただし現時点では、個人または中小企業の場合は、面積が100㎡以下で、資本金か出資総額が5,000万円以下であれば法令の対象外となります。
ただし、オフィスや今回対象外となった施設に言及した新たな法律が決まるまでの経過措置であり、遠くない将来、変わる可能性があります。
 

受動喫煙防止法と東京都の条例との違い

 
健康増進法の改正に加えて、東京都では独自の条例を制定し、受動喫煙対策を行っています。
いずれも目的は受動喫煙対策ですが、両者の対象・内容には違いがあります。
 

東京都の条例では飲食店の面積は例外対象にならない

今回国が定めた法令(健康増進法)では、子供の出入りに関わらず、客席面積が100平方メートル以下の飲食店は対象外となっています。
しかし、東京都の受動喫煙防止条例ではお店の広さが100平方メートル以下の飲食店でも、従業員を使用する飲食店は全て原則禁煙となります。
 
ただし、家族経営の飲食店であり、20歳未満の立ち入りを禁止する場合には、規制の例外対象です。
少々ややこしい例外条件ですが、働いている人が家族だけというお店であれば喫煙可能な店舗として認められるということです。
 
また東京都の条例では、全面施行に先立った2019年9月1日から喫煙・禁煙の状況が分かる店頭表示が義務付けられます。
 
このような条例が制定されることで、国の法令では改正健康増進法の対象店舗が約45%に留まるのに対し、東京都では約85%の飲食店が受動喫煙防止対策を義務付けられる対象となります。
したがって東京都は、日本の受動喫煙防止対策において一歩先を行くと言えるでしょう。
 

教育施設では屋外も含めて完全禁煙

現時点では、保育所と幼稚園、小中学校、各種養成施設、児童福祉施設は屋内完全禁煙という点と、屋外であれば条件をクリアしているところには喫煙場所を設置できるという点は法令も東京都の条例も同じです。
 
しかし東京都の受動喫煙防止条例では、2019年の9月1日からは保育園・幼稚園、小・中・高校などは「敷地内禁煙」つまり屋外であっても完全に禁煙となり、敷地内に喫煙所を作ることもできません。
屋内屋外ともに禁煙となりますから、条件つきで喫煙所が設置できる健康増進法(法令)とは異なる点のひとつです。

罰金は東京都条例の方が低い

健康増進法(国の法令)においては、例えば喫煙が禁止されている場所で喫煙した場合30万円以下の罰金、灰皿を提供した施設管理者には50万円以下の罰金が課せられます。
一方、東京都の条例違反をした場合は一律で5万円以下の罰金となっており、罰金の金額も法令とは異なります。
 
つまり、例えば東京都において、法律・条例ともに「禁煙」と指定する場所での喫煙を行った場合には、法令が優先的に適応されます。
一方、(法律に無く)条例でのみ定められた項目についての違反には、条例で定められた過料が課せられます。
 

受動喫煙を防ぐには企業の努力も必要

健康増進法の改正・各自治体の受動喫煙防止条例が成立したことによって、受動喫煙のリスク軽減が期待できます。
しかし、現時点では法令・条例ともに完璧とは言えず、特に国が定めた法令では、本来受動喫煙防止のために対策を取るべき施設の内、半分以上の施設が経過措置の対象となるため、国としても諸問題から、対策に踏み切れていない様子が伺えます。
 
今回の法令・条例の制定により、日本の受動喫煙の問題解決に向けて一歩前進したとはいえ、望まない受動喫煙を完全に防ぎきれない面があるというのも事実です。
 
法令では、オフィスでの受動喫煙対策にも言及がありました。
現時点では不十分とはいえ、世の中が受動喫煙防止に向けて重い腰を上げたこの機会に、企業としては、社員の働きやすい環境づくりの一環として、喫煙ブースを設けることもひとつの選択肢かもしれません。