1.ファクトリーブースが求められている背景

 パーテーションラボでは、クリーンルーム用の個室や、工場内や倉庫内の事務スペース・打ち合わせスペース・工場見学者向けのスペースなどとして人気のファクトリーブースですが、昨今では世界的な温暖化で、熱中症対策を目的とした需要が目立つようになりました。
 
年々暑さが厳しく長くなり、平成30(2018)年には、熱中症による職場での死傷者が1000人を超えるなど、これまでの対策のままでは太刀打ちが出来ない時代に突入しています。
熱中症対策はもはや個人でまかないきれるものではなくなり、作業環境・労働環境や働き方まで踏み込んだ対策を講じることが急務となりました。

ファクトリーブースの導入は、熱中症対策のひとつとして有効かつ比較的手軽な手段です。例えば、工場内や倉庫内全体を快適な気温に保つことは難しいですが、その一部に必要な大きさの個室を作れば、温度管理がしやすくなります。
また、作業スペースの近くに休憩室を作り、作業の合間に簡単に利用できる環境を整えることも、ひとつの有効な対策となります。
 
一方で、弊社に熱中症対策としてのファクトリーブースのお問合せを頂くのは、多くの場合、7月以降の気温が上がってしまった後です。しかし、身体が暑さに慣れていない中、急激に気温が上がる7月は最も熱中症が起こりやすい時期でもありますので、ファクトリーブースの施工は7月に入る前に終わらせ、万全の体制で夏に臨むことをオススメします。

ファクトリーブースは、その他にもさまざまなところで活用できます。
2020年6月より、食品衛生法が改正され、その中には「HACCP」の義務化が盛り込まれます。各社それぞれの工程を見直す中で、例えばゾーニングや、導線の設計などの問題を是正したいとき、清潔な部屋を設置することが必要なとき、やはり天井の高さや広さによって思い通りにいかないことも多いのが工場や倉庫の難しさです。そんなときには形・デザインの自由度が高く、ライン移設の際などにも解体・再施工が可能なパーテーション(ファクトリーブース)は活躍してくれます。

 

2.「酷暑」が引き起こす労働環境の問題

 平成21(2009)~30(2018)年の過去10年間の、職場における熱中症による死傷者数の推移を見ると、平成21年に150人だったものが、平成22年には656人と急増、その後は500人前後に留まっていたものの、平成30年には前年の2倍以上の1178人の死傷者が出る事態となりました(※1)。
 
特に厳しい年だったとはいえ、10年前(平成21年)と比べて死傷者が約8倍の数にも上り、この10年で状況は一変してしまったと言えるでしょう。

 

1. 職場における熱中症による死傷者数の推移(平成21~30年)

平成21~30年の10年間の職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数(以下あわせて「死傷者数」という。)をみると、平成22年に656人と最多であり、その後も400~500人台で推移していたが、平成30年の死傷者数は1,178名となり、平成29年と比較して、死傷者数・死亡者数いずれも2倍以上に増加している。

 

※表1「平成30年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04759.html

 

※1「平成30年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04759.html

 

3.熱中症対策が特に必要な建設業・製造業・運送業

 平成26~30年の5年間では、死傷者数の最も多い職場は建設業で、次の製造業運送業を含め、3つの業種だけで毎年5割以上、多い年には全体の7割近くを占めています(※1)。

厚生労働省の見解によると、熱中症が生じやすい職場環境の特徴には

  • 炎天下の屋外作業
  • 屋内作業でも炉や発熱体があることなどから、一般の環境よりも高温多湿の場所が多くみられること
  • 業務に従事する人々は労働者自身の症状に合わせて休憩等を取りにくいこと
  • 運動競技ほどには高い身体負荷はかからないものの身体活動が持続する時間が長いこと
  • 労働安全衛生保護具の着用により体熱が放散しにくい状況になっていること

以上のようなことがあります。(※2)

このような「熱中症が生じやすい環境」となりやすい、建築業製造業運送業などでは特に注意と対策が必要です。

 

※2 「職場における熱中症予防対策マニュアル(平成30年3月3日「職場における熱中症予防対策マニュアル作成委員会」による改訂)」5ページ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164083.html

 

4.企業側が積極的に労働環境を変えていかなければいけない現代

 これまでの比でない暑さから、夏になればスポーツドリンクや経口保水液、塩タブレット等がスーパーやコンビニに大量に並ぶ様子も夏の風物詩となり、「こまめに水分を取る」「塩分を補給する」と、個人で可能な熱中症対策はこの数年で浸透してきました。
 
しかし昨今の酷暑の前には、各々で一定の対策を講じていても具合が悪くなる場合や、最悪の場合、亡くなるケースも見られ、熱中症対策は、もはや個人の自己管理で賄える範疇を超えてしまったと言えます。

 

そのため、職場での熱中症を防ぐためには、事業者が環境を整えることも重要となります。

厚生労働省でも「職場における熱中症予防対策マニュアル」を提示し、さまざまな面からの対策を可能な限り実施するよう、推奨しています。
 
その中には、作業時間の短縮や水分・塩分補給を推奨する「作業管理」、各々の健康診断結果や、体調面についての対策を推奨する「健康管理」の他、「作業環境管理」として職場環境の改善策も盛り込まれています(※2)。

 

1. 作業環境管理

(1) WBGT 値の低減等
次に掲げる措置を講ずること等により当該作業場所の WBGT 値の低減に努めてください。

ア WBGT 基準値を超え、又は超えるおそれのある作業場所(以下単に「高温多湿作業場所」という。)においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けます。

イ 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けます。また、ミストシャワー等による散水設備の設置を検討します。ただし、ミストシャワー等による散水設備の設置に当たっては、湿度が上昇することや滑りやすくなることに留意してください。

ウ 高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設けます。また、屋内の高温多湿作業場所における当該設備は、除湿機能があることが望ましいところです。

(2) 休憩場所の整備等
労働者の休憩場所の整備等について、次に掲げる措置を講ずるよう努めてください。
 
ア 高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所や日陰等の涼しい休憩場所を設けます。また、当該休憩場所は臥床することのできる広さを確保します。
 
イ 高温多湿作業場所又はその近隣に、氷、冷たいおしぼり、作業場所の近隣に、水風呂、シャワー等、身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備等を設けます。

ウ 水分及び塩分の補給が定期的かつ容易に行えるよう高温多湿作業場所に飲料水の備え付け等を行います。

 

※2「職場における熱中症予防対策マニュアル(平成30年度版)」27-28ページ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html

 

大きな費用を掛けずともすぐに対応可能なものもある一方で、設備の導入が必要なものも含みます。

例えば、「高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設ける」と空調の整備を促す内容、また、「高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所や日陰等の涼しい休憩場所を設けます。また、当該休憩場所は臥床することのできる広さを確保します」と、冷房を備えた”休憩場所それ自体”を設けることを促す内容などがあります。

 

5.パーテーションのファクトリーブースで熱中症対策!

 一方で、例えば製造業の工場や、運送業の倉庫など、天井も高く広いスペースに対して、空調で快適な温度を保つことは難しく、大掛かりな設備には費用も掛かります。

そのようなときに有効なのが、ファクトリーブースです。
ファクトリーブースとは、屋根つきのパーテーションです。
完全な個室となるため、温度管理がしやすく、大きさによっては、作業場でありながらも家庭用の空調で十分に快適な温度を保つことができます。

パーテーションを用いて作るため、大きさや形の自由度も高く、単独設置・コーナーへの設置はもちろん、ラインの途中に設置することも可能です。

 

さらに、オフィスなどに設置されるパーテーションと同様に、解体・再施工が可能なため、将来的にラインの増設等があった場合には、移設することも可能です。
またパーテーションですから、豊富なカラーバリエーションやガラスの組み合わせなど、自由度が高く、デザイン性にもアドバンテージがあります。

 

製造業の場合には、鉄などを扱うために温度を下げることができない工程、反対に、食品などを扱うために温度を上げることができない工程もあり得るため、環境を整えたい気持ちはあるものの、難しいというお悩みも見られます。
そういった場合には、作業場の環境を整えることが出来ずとも、すぐに利用できる位置に休憩室等を設けることも重要な対策となります。
 
広い工場内や倉庫内では、休憩室は用意されているものの、作業場からは遠い位置にあり、休憩に利用することが難しい状況や、そのために重大な熱中症に繋がる事例が少なくありません。

とはいえ、作業場の付近はあまり大きな休憩室を作るためのスペースが取れない場合もあります。
ファクトリーブースであれば、そういった場合にも設置が可能です。形の自由度も高く、ほとんどの場合で設置場所も選びません作業場付近のデッドスペースを活用する事も可能ですので、作業場付近にあまりスペースが無い場合などの環境改善についても有効です。

 

 

 

6.おすすめのファクトリーブースの施工時期

例年、弊社へのファクトリーブースのお問合せは、7月以降に増えます。
しかし、熱中症による死傷者数の9割は、7月・8月に発生しています。最も死傷者数が多かった平成30(2018)年では、7月の発生件数が、同年の8月の発生件数の2倍に届くほどでした。
 
熱中症は、身体が暑さに慣れていない状態で、突然暑さに見舞われた時に起こりやすいとも言われます。梅雨があけ、7月に入ると気温は一気に上昇します。
従業員の健康にも関わることであるため、大きな事態になることを防ぐためには、7月までに環境を整えることが大切です。

年によって変動はあるものの、夏の暑さは徐々に厳しく、長くなっています。(※3)
令和元(2019)年の速報値では、前年 平成30(2018)年を下回る予想ではあるものの、依然として高い数字のままであり、時期や地域によってはやはり前年を上回る数の死傷者が発生しています。

環境の変化・社会の変化が目まぐるしい中、あらゆる面について、10年前と同じ設備・体制のままで10年前と同じことを再現することが難しい時代となりました。

※3『東京の夏が「昔より断然暑い」決定的な裏づけ 過去140年の日別平均気温をビジュアル化』(東洋経済ONLINE 2018/7/21) https://toyokeizai.net/articles/-/229965 

 

7.2020年6月より義務化された「HACCP」に向けても活躍するファクトリーブース

2020年6月より、食品衛生法が改正されました。その中には、全ての食品等事業者に向けての、「HACCP」の制度化が盛り込まれています。
 
各社がそれぞれの工程を見直す中で、例えばゾーニングや、導線の設計などの問題を是正したいとき、清潔な部屋を設置することが必要なとき、やはり天井の高さや広さのために思い通りにいかないことも多いのが工場や倉庫の難しさです。
 
そんなときには形・デザインの自由度が高く、ライン移設の際などにも解体・再施工が可能なパーテーション(ファクトリーブース)は活躍してくれます。

 

※「食品衛生法の改正について」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html

その他 

※ 『職場で熱中症、死者28人 休業者は1千人「過去最悪」』(朝日新聞ONLINE 2019/5/17) https://www.asahi.com/articles/ASM5K5RLSM5KULFA03W.html 

※ 『職場で熱中症、死傷者1100人 厚労省「作業環境に問題」』(毎日新聞 2019/5/17) https://mainichi.jp/articles/20190517/k00/00m/040/252000c

 

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