オフィスや事務所を移転する際は、契約書に基づいた原状回復工事を行う必要があることをご存知ですか。一般的な賃貸の住居と異なり、賃貸のオフィスや事務所は借主の負担で工事を行うケースもあります。そのため賃貸契約を結ぶ際に退去時に必要な原状回復工事の流れやよくあるトラブルなどを知っておくと、スムーズに退去できるはずです。

本記事ではオフィスの移転や退去に伴い原状回復工事を検討している方に向けて、原状回復工事に関する法律や工事の区分と流れ、工事の際に生じやすいトラブルなどを紹介します。

本記事を読み、原状回復工事に関して参考になれば幸いです。

 

1.原状回復工事とは?

原状回復工事とは?

オフィスや事務所の原状回復工事とは、賃貸物件の契約終了時に借主が物件を入居前の状態に戻す工事のことです。

後述する原状回復に関するガイドラインで基準が細かく定められており、契約内容によって工事内容が異なります。

具体的な原状回復工事には、借主側で設置したパーテーションの撤去や壁の傷や汚れの修繕などがあります。

またオフィスや事務所は、退去時に次のテナントが改装・入居しやすいよう、契約期間が終了するまでに原状回復工事を終えておく必要があるので、注意が必要です。

なお原状回復と似た言葉に「現状復帰」がありますが、こちらは建設業関係者や建設業界で使われている言葉です。物件を元の状態に戻す意味では同じですが、現状復帰は一般的に災害で損傷を受けた物件や住宅設備を被災前の状態まで戻すときに使われています。

オフィス移転工事における原状回復と現状回復・復帰の違いとは?

 

2.原状回復に関する法律

原状回復に関する法律には、民法があります。

民法は2020年の4月に改正が行われており、第621条で「賃貸借が終了したときは、その損傷を現状に伏する義務を負う」と原状回復に関する内容が明記されました。(※1・2)この法令は一般の賃貸住居だけではなく、賃貸オフィスや事務所にも適用されます。

民法においては、鍵の取り替えや冷蔵庫などの後部壁面の電気焼けによる黒ずみ、家具の設置跡などの通常消耗や経年変化は原状回復の対象外です。

※参考1:法務省.「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」.https://www.moj.go.jp/content/001289628.pdf ,(参照2024-07‐02).

※参考2:e-Gov法令検索.「民法第六百二十一条(賃借人の原状回復義務)」. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 ,(参照2024-07-02).

 

3.オフィスの原状回復と一般住宅の原状回復の違い

オフィスの原状回復と一般住宅の原状回復の違い

オフィスと一般住宅の原状回復には、費用、工事の期限や貸主と借主の工事責任負担範囲などに違いがあります。

オフィスの物件はビジネスに利用されることが多いので、スケルトンの状態で貸し出すことも少なくありません。スケルトンで貸し出した場合、入居するテナントが内装工事や家具・設備などを設置してオフィス環境を整えるのが一般的です。そのためオフィスの退去時には原状回復工事でスケルトンの状態まで戻す必要があるので、工事費用が高額になりがちです。またオフィスの賃貸契約期間は比較的短いことから、原状回復工事を完了する期限が短いこともあるでしょう。

一方で一般住宅は個人の生活の場として利用されているため、大掛かりな設備や家具の設置が少なく、原状回復の費用を抑えやすいです。一般住宅はオフィスに比べると賃貸契約期間が長期なので、原状回復を行う期限も長めに設定されています。また一般住宅を借りる際は法的な規定による契約書を必要としないケースも多く、原状回復の程度は不動産会社や賃貸物件のオーナーの判断に委ねられることもあります。

さらにオフィスの原状回復では、貸主と借主の工事責任負担範囲も契約内容や法令によって異なるので注意しておきましょう。

オフィスの原状回復で貸主が負担する費用には、物件の屋根や外壁の修理、共用部分の改装、空調やエレベーターなどの設備更新があります。一般的に借主は物件を使用して生じた損耗や傷みに関する修繕費用を負担しますが、契約内容によって借主が一部負担するケースもあるため、都度確認しましょう。

 

4.原状回復工事の工事区分

 原状回復工事の工事区分にはA、B、Cの3つがあり、工事の区分によって工事業者の選定者・発注者・不要負担者・所有権の保持者が決まります。

この違いから退去時の原状回復の責任範囲が決まるため、それぞれの工事区分の特徴を詳しく理解しておきましょう。ここでは、それぞれの工事区分を説明します。

A工事

A工事の対象範囲は建物の外装や外壁、エレベーター、共有トイレ、消防設備などの共有部分です。

A工事では貸主が全て工事業者の選定から発注、費用負担までを一貫して行い、工事の所有権も持つことが多いです。

B工事

B工事の対象範囲は、空調や照明設備、配電盤、旧排水管、防災用の設備など建物全体に関係するものを指します。

B工事では工事業者の選定は貸主が行い、発注や費用負担は借主が行います。B工事の対象範囲は建物全体に大きな影響を与える可能性が高いことから、建物の所有者の貸主が工事業者を選ぶ権利と工事の所有権を持つケースが一般的です。

C工事

C工事の対象範囲は、床のタイルやクロス、家具などの内装、コンセントや照明器具、配線、会社名や部署名の案内表記など、テナントの専有部分です。

C工事では業者選定から発注、費用負担まで全て借主が行い、工事の所有権も借主が持つケースが多いでしょう。管理会社によって異なりますが、C工事の対象範囲に天井やパーテーション施工などの内装工事が含まれるケースもあります。

 

5.原状回復工事の流れ

原状回復工事の流れ

原状回復工事は具体的にどのような流れで行うのでしょうか。ここでは工事完了までのステップを説明します。

賃貸借契約書の確認

一般的に、テナントが負担する原状回復工事は賃借契約書に定められています。まずは契約書の内容を確認して工事の範囲や工事区分などを確認しましょう。

原状回復工事の範囲を確認したら、具体的な工事のスケジュールを立てていきます。この際、工事の内容を正しく理解しておくことが大切です。

例えば退去時にスケルトン状態まで戻す必要があるのか、内装を仕上げた状態まで戻すのかでは工期が変わってきます。原状回復工事で契約書に指定されている状態まで戻さなかった場合は、退去直前に追加の工事が発生したり、費用負担が増えたりする可能性があるため、きちんと確認をしておきましょう。

施工業者へ連絡し、現地調査を実施

賃貸借契約書により施行業者が貸主から指定されている場合は、施行業者に問い合わせを行い現地調査を依頼します。一般的に、契約満了日の6カ月前を目安に施工業者を決めるとスムーズです。

貸主から施工業者の指定がない場合は、施工業者に問い合わせを行って選定を進めていきます。施工業者によって工事の費用や工期、対応できる内容などが異なるため、複数の施工業者を比べてより条件に合う業者を選ぶようにしましょう。

現地調査では、施工業者にオフィスや物件の状態を確認してもらい、原状回復工事が必要な範囲の共通認識をすり合わせします。工事への認識の違いからトラブルにつながるのを防ぐためにも、現地調査には可能な限り立ち会い、不明な点は質問して解決しておくと良いでしょう。

見積もりの確認・発注

専門業者による現地調査が終わったら、工事費用の見積もりや工事のスケジュールを確認して発注を行います。

貸主指定の業者が原状回復工事を行う際は、見積もり書に不要な工事が含まれていないか、工事の仕上がりが現状よりもグレードアップしていないか、廃棄物の数量が適切かなど納得がいくまで確認・交渉を行うようにしましょう。

また入居している建物の都合で、工事が可能な日や時間帯を制限される場合もあるため、発注前は貸主に工事のスケジュールの確認を取っておくのがおすすめです。

着工

工事を発注したら、契約満了日の1カ月前を目安に原状回復工事に着工しましょう。

工事着工後は、施工会社の担当者に定期的な報告を依頼して、契約通りの工事が行われているか確認をしながら進めるとトラブルを防ぎやすくなります。

原状回復工事の施工が完了してしまうと確認できない箇所もあるため、可能な限り施工会社の担当者に依頼して立ち会いの中間検査を行いましょう。

完了検査

原状回復工事が完了したら、工事が契約通りに正しく行われたかどうかを確認するために完了検査を行います。

賃貸借契約書に定められた原状回復の範囲や仕上がり、設備機器の機能確認など最終確認では物件のオーナーにも立ち合ってもらうと良いでしょう。

施工業者によって、工事中に発生した廃材などを適切に処理してくれるサービスも行っているため、工事後の後片付けをスムーズに終わらせたい方は利用することをおすすめします。

 

6.原状回復工事でよくあるトラブル

原状回復工事では、貸主と借主の認識の違いや修繕範囲の拡大、減耗消費の修繕費用請求などのトラブルが起こることがあります。

原状回復工事にかかる費用の認識が貸主と借主で異なる場合、貸主側が工事の全額負担を借主に要求するケースがあります。賃貸借契約書の条項が曖昧だったり工事を行う専門業者見積もりの内容や交渉が不十分だったりすると起こりやすいトラブルです。

また契約書の定義が不十分なことから、工事を行う専門業者の判断で、本来負担しなくても良い減耗消費の原状回復を貸主から要求されるケースもあるので注意しましょう。このケースは、日頃から定期的なメンテナンスをしていたと主張する借主と必要以上の減耗が起きていると判断する貸主、工事を行う専門業者の三者間の認識の違いから起こります。入居前に修繕範囲や費用の確認をしっかりと行い、必要であれば契約書に明記しておくと、退去時のトラブルを防ぎやすくなります。

どのようなケースでも契約書の内容を明確にし、不明点は入居前や原状回復工事前に関係者同士できちんと確認をしておくことが大切です。原状回復工事に関する賃貸トラブルを防ぐには、国土交通省がまとめているガイドラインの知識を事前に得ておくことも有効です。

※参考:国土交通省.「「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料」.https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001611293.pdf ,(参照2024-07-02).

 

7.まとめ

本記事では、オフィスの移転や退去に伴い原状回復工事を検討している方に向けて、原状回復工事に関する法律や工事の区分と流れ、原状回復工事の際に生じやすいトラブルなどを紹介しました。

パーテーションラボは、パーテーションの設置に伴う付帯工事も提供しています。「退去まで時間がない」や「費用を抑えて原状回復工事がしたい」など、お客さまのニーズに応じたサービスを無料見積もりでご提案するのが特徴です。そして工事の価格や内容などを納得いくまで相談することが可能です。契約後は進捗状況の報告を行いながら原状回復工事を進めます。

またパーテーションラボのグループ会社のアイピックエコシステム株式会社では、原状回復工事の際に発生する廃材や産業廃棄物を、リサイクル法に基づいて収集・処理するサービスも行っているため、工事の見積もりから完了までの流れがスムーズです。

パーテーションを設置しているオフィスや事務所の退去に伴い原状回復工事を検討されている方は、ぜひパーテーションラボまでお問い合わせください。

 

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