オフィスの内装工事の費用は、減価償却の対象になります。

一般的に、減価償却は資産の取得費用を分割して費用化する仕組みで、オフィスの新設や移転、リフォーム時に適用できます。減価償却をする際は、内装工事の耐用年数を正しく理解して計上すると、確定申告時に減税効果を得られる可能性があります。しかし、耐用年数の設定や適切な勘定科目の選定は、分かりにくく複雑だと感じる方も多いでしょう。

本記事では、オフィスの内装工事の費用を減価償却する際に必要な耐用年数を詳しく知りたい方に向けて、内装工事費計上の際の勘定科目や計算方法などを詳しく解説します。本記事を読んで内装工事の耐用年数に関する知識を深め、正しい減価償却の方法を理解しましょう。

 

1.内装工事は減価償却資産とみなされる

 

オフィスの内装工事は減価償却資産とみなされる

 

内装工事にかかる費用は減価償却資産として扱われるため、全額を一度に計上するのではなく、耐用年数に応じて分割して費用化されます。

減価償却とは、資産価値が年数の経過に年数の経過に応じて減少する際に行う会計処理のことを指します。建物内部に関わる内装工事は高額であり長期間にわたって使用されるため、間仕切り壁や建具の設置、塗装工事、床・壁・天井の仕上げ工事などは、減価償却費として計上されるのが一般的です。

 

減価償却の目的

減価償却の主な目的は、費用収益対応の原則に基づいて企業の経営活動をより正確に反映させることです。この原則に従うと、会計期間中に企業が支出した費用のうち、その期間の収益との因果関係のある費用だけを計上します。

例えば、設備投資や内装工事などの支出は翌年度以降も効力を持つため、その費用を耐用年数に応じて分割して費用化します。これにより、企業の財務状況をより正確に把握し、経営の健全性を保つことにもつながります。

減価償却資産となる条件

減価償却資産となる条件は、国税庁によって明確に定められています。

まず、使用期間が1年未満のものや取得価額が10万円未満の資産は、その年の必要経費として全額を計上できます。また取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、その取得価額の3分の1を3年分に分割して毎年経費として計上することが可能です。

これらの規定により、企業や個人事業主は資産の購入と税務処理を計画的に行うことが求められます。減価償却資産の要件を理解し、適切に処理すると税負担の最適化を図れます。

※参考:国税庁.「No.2100 減価償却のあらまし」.(参照2024-08-20)

 

2.耐用年数とは

内装の減価償却資産における耐用年数とは

 

 減価償却資産の耐用年数とは、資産が実際に使用できると考えられる年数のことです。メーカーが定めている耐久年数とは異なるので注意してください。

この期間は「法定耐用年数」として国税庁が別表に定めており、減価償却を計算する際の基準となります。オフィスの内装工事にかかる費用を減価償却する際は、まず工事の構造や用途に応じた法定耐用年数を確認しましょう。その年数に基づいて定額法と定率法のどちらを使用するかを判断し、分割して計上します。

法定耐用年数の理解は、正確な税務処理に欠かせません。企業の税負担の最適化を図るためにも、国税庁の指針に従って適切に計算しましょう。

※参考:国税庁.「主な減価償却資産の耐用年数表」.(参照2024-08-20)

 

3.内装工事に関連する耐用年数

 内装工事に関連する耐用年数には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここではオフィスの内装工事に関連する耐用年数を2つ紹介します。

 

内部造作物

内部造作物とは、建物の内部に作られた造作のことです。具体的には、作り付けの家具や棚などがあります。

造作物に関する耐用年数は、基本的にその造作物が設置された建物の耐用年数に応じて適用されます。建物の構造物かどうかは関係してきません。以下は、内部造作物の建物の構造の分類と、ビジネス別の耐用年数です。

建物の構造 店舗用耐用年数 事務所用耐用年数 飲食店用耐用年数
鉄筋コンクリート 39年 50年 34年もしくは41年
ブロック・レンガ・石 38年 41年 38年
22年 24年 20年

※参考:国税庁.「主な減価償却資産の耐用年数表」.(参照 2024-09-02)

 

内装用の電気機器

内装用の電気機器とは、照明器具や電話など、電気を使う機器のことを指します。

電気機器製品の品質や使用環境、メンテナンスの状況などによって総合的に判断されます。
以下は、内装用の電気機器の耐用年数を表にまとめたものです。

用途 細目 耐用年数
電気設備・照明設備 蓄電池電源設備
その他
6年
15年
事務機器・通信機器 インターホン 6年
冷房・暖房用機器 冷暖房設備 6年

※参考:国税庁.「主な減価償却資産の耐用年数表」.(参照 2024-09-02)

 

4.内装工事費用計上の際の勘定科目

 内装工事費用計上の際には、具体的にどの勘定科目で計上すれば良いのでしょうか。ここでは勘定科目を4つ紹介します。

 

建物

内装工事費は、次に解説する「建物附属設備」に該当しないものは原則として「建物」として計上します。

具体的には、左官工事や防水工事、ガラス工事、塗装工事などです。建物に該当するかどうかは、工事を行う部分が建物と一体化しているかどうかの判断基準に基づきます。例えば、天井から床までを間仕切りする施工型ハイパーテーションは建物の一部として扱われるため、勘定科目は「建物」です。この時のハイパーテーションの耐用年数は15年と定められており、他の内装工事と比較すると耐用期間が長めに設定されています。

建物附属設備

建物附属設備とは、建物の利用価値を向上させる設備のことです。

具体的な設備には、照明設備などを含む電気設備や給排水設備、ガス設備、冷暖房設備などが含まれます。また陳列棚やカウンターなどの店舗用の簡易装備や、間仕切りの上部が天井に届かない可動式のパーテーションも、建築附属設備として計上されます。この時、可動式パーテーションの耐用年数は3年です。

建物附属設備は建物に固定されているけれども一体化はしていないため、「建物」として計上されるか「建物附属設備」として計上されるかの判断が難しいことが特徴です。例えば、間仕切りの工事を専門業者に依頼した場合でも、その間仕切りが簡単に移動できると判断されると「建物」ではなく「建物附属設備」として扱われます。このため、資産計上時には設備の性質や使用目的を正しく評価して、適切な分類を行うことが求められます。

工具器具備品

内装工事費の工具器具備品は、10万円以上で、かつ1年以上使用する固定資産の費用を処理する際に用いる勘定科目です。

この勘定科目に該当するものとしては、オフィスで使用するデスクやパソコン、コピー機や電話設備などが挙げられます。

しかし「建物附属設備」と「工具器具備品」は混同しやすいので、計上する際はその違いを理解して正しい勘定科目を選ぶことが大切です。例えば、天井に埋め込まれた冷房機器は建物と一体化しているため「建物附属設備」として計上されるのが一般的です。一方で、壁に後付けで設置された冷暖房機器は簡単に取り外しができるため「工具機器備品」として計上されます。

このように、工具器具備品に当てはまるかどうかを区別する際は、設備が建物に固着しているかどうかが判断基準になります。

消耗品費

消耗品費とは、取得価額が10万円未満、または1年未満で消耗する物品を購入した際に使用する勘定科目です。

例えば、ローパーテーションやパーソナルブースのように、移動が容易で簡易なパーテーションは「消耗品」として計上されます。これは、パーテーションの耐久性が低く、短期間で価値が低下するためです。

また、業務上必要な用品で取得価額が10万円未満のものは、取得時に全額を経費として計上できるため減価償却の必要がありません。

 

5.減価償却費の計算方法

 

 減価償却費とは、時間の経過によって価値が少しずつ減っていく資産の取得価額を耐用年数で分割して計上する費用のことです。

そのため、資産の減少分を経費として計上できます。減価償却費の計算方法は、主に定額法と定率法の2つがあり、その違いは以下の通りです。

・定額法:必要経費を耐用年数で均等に割り、毎年同じ金額を経費として計上する方法で、計算がシンプルで分かりやすいのが特徴です。特に個人事業主の場合、内装工事やその他の設備にかかる減価償却費を計算する際には定額法が一般的に使用されます。また、定額法を使うと安定した経費計上が可能なため、予算管理がしやすいメリットもあります。

・定率法:資産の償却率に応じて減価償却費を計算する方法です。この方法では、初年度に多くの経費を計上し、年々その額を減少させていくのが特徴です。定率法は大企業や初期投資が大きい場合に有利な方法で、初期のキャッシュフローを確保しやすいので財務戦略が立てやすくなるメリットがあります。

 

6.内装工事の減価償却におけるポイント

 内装工事の減価償却を行う際は、いくつかのポイントに注意する必要があります。

ここでは、内装工事の減価償却で気を付けておきたい具体的なポイントを詳しく見ていきましょう。

 

かかった費用を明確にする

内装工事の耐用年数を決定するためには、工事にかかった金額を明確にしておくことが重要です。

内装工事には、設計や施工費などの直接的なものだけではなく、建築設備の移設や解体費用などの間接的な費用も含まれます。これらの費用を正確に把握し、内装全体にかかった金額を明確にしておかないと、耐用年数や減価償却費用の計算が正確に行えない可能性があります。そのため、請求書や領収書などの関連書類をきちんと保管し、後からいつでも詳細を確認できるようにしておくことが大切です。

建物の所有者によっても耐用年数が異なる

内装工事の減価償却を行う際には、建物の所有者が自社か他社かによって耐用年数が異なることにも注意が必要です。

自社所有の建物に対する内装工事費は、建物本体や建物附属設備の耐用年数に基づいて減価償却します。その際、新築と中古で耐用年数が異なる点にも注意が必要です。

一方、賃貸の建物に内装工事(造作)を行う場合には、その造作を一つの資産として扱い、耐用年数を設定するように求められます。自己所有の建物に対する内装工事とは異なり、賃貸物件での内装工事の耐用年数は、建物の耐用年数や造作の種類、用途、使用材質などを考慮して合理的に見積もる必要があるので注意しましょう。

また、賃貸物件の建物附属設備に造作をした場合は、建物附属設備の耐用年数に基づいて減価償却を行います。しかし、賃借期間が定められており期間が更新できなかったり有益費や買い取り請求ができなかったりする場合には、その賃借期間を耐用年数として償却できるケースもあります。

さらに、同じ建物に複数の造作を行うと、それらをまとめて一つの資産として扱い、耐用年数を総合的に見積もるケースもあるので細かいルールをきちんと確認するようにしましょう。

※参考:国税庁.「No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数」.(参照2024-08-02)

原状回復工事は減価償却資産に含まれない

内装工事の減価償却を行う際には、原状回復工事が減価償却資産に含まれないことにも注意しましょう。

原状回復工事とは、建物や設備を入居当初の状態に戻すための工事です。建物のテナントによって手が加えられた建物や内装を元の状態に戻し、資産の機能を回復させるのが主な目的です。そのため、原状回復工事は基本的に修繕費として処理され、減価償却資産としてはみなされません。

修繕費として計上する際は、その年の経費に全額を計上しましょう。その際、関連書類に原状回復費用の旨を明記する必要があるので注意しましょう。

改修工事は減価償却資産に含まれない場合がある

内装工事の減価償却では、改修工事は減価償却資産に含まれない点にも気を付けましょう。

改修工事とは、建物の外観や内観をきれいにしたり使いやすくしたりする工事です。一般的に、改修工事を行うことで建物の機能性を向上し、資産価値を高める目的があります。しかし、工事の内容によっては、費用が減価償却資産として資産計上できる場合と、必要経費として計上される場合に分かれるので注意が必要です。

例えば、改修工事が建物の価値を増加させるものであれば、その費用を資産として計上できます。一方で、改修工事が単なる修繕費に該当すると判断されると、改修工事の費用が減価償却の対象にならないため全額をその年の必要経費として計上します。

 

7.まとめ

オフィスの内装工事を行う際には、減価償却を適切に行うための耐用年数の設定方法や、適切な勘定科目の選定に関する知識を持っておくと有利です。内装工事の耐用年数を正しく理解して経理処理を行うことは、企業の健全な財務管理を行うことにもつながります。

オフィスの内装工事にてパーテーションの設置を検討されている方は、種類や設置方法によって耐用年数の特定が難しいことを知っておきましょう。一般的に、施工工事を経て設置される天井から床までの高さがあるハイパーテーションは、固定資産として扱われ減価償却の対象となるので、経理上のメリットがあります。

しかし、可動式のパーテーションや卓上に置いて使うタイプのパーテーションは消耗品として扱われ、その費用は経費として計上されます。パーテーションの種類や設置方法に不明な点がある場合は、税理士や税務署などの専門家に相談して適切な判断を行うことも大切です。

パーテーションラボでは、専門的な知識と経験を持つスタッフがお客さまのニーズに沿ったアドバイスやサポートを提供しています。オフィスや事務所の内装工事で減価償却を考慮した工事プランの提案も可能です。オフィスの新設や移転に伴いパーテーションの施工を検討している方は、ぜひパーテーションラボにご相談ください。

 

オフィスのパーテーション工事における「減価償却」について

 

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